もらった花束が枯れてきたのに、捨てるタイミングを逃したまま窓辺に置いてある。
そんな束が、今年の秋冬の服選びの見本になります。
こんにちは、フリーランススタイリストの神崎りおです。
この記事では、枯れた花から色を3つ拾ってコーディネートに置きかえる手順と、くすみ色で顔色を沈ませないコツをお伝えします。
用意するのは花束とお手持ちの服だけなので、次のお休みの昼間にでも試してみてください。
枯れた花束は、くすみ配色の見本帳です
花は乾くと、色が静かに変わります
生けたまま忘れていた花が、気づいたら茶色くなっていた。
そんな経験は、きっとどなたにもあると思います。
学生時代に花屋でアルバイトをしていた頃、そうした花を片づけるのも私の仕事でした。
閉店後のバケツの横で、赤いバラが深いワイン色に沈んでいるのを見つけて、この色のスカートがあったら欲しいなと思ったことをよく覚えています。
花が乾くと色が変わることは、花のプロも織り込んでいます。
花生師の岡本典子さんはるるぶ&more.の記事で、ドライフラワーになると色が薄くなるので、作るなら少し派手すぎると感じる花を選ぶとよいと話しています。
鮮やかなピンクが褪せてモーヴに寄っていく様子は、服の売り場で「くすみカラー」と呼ばれている色にとてもよく似ています。
束の中で色の「調子」がそろっています
くすみ配色で迷う方の多くは、色の組み合わせを考えて手が止まります。
ピンクとカーキは合うのか、紫と茶色はどうかと考え始めると、きりがないですよね。
色彩の分野には「トーン」という考え方があります。
日本色彩研究所の解説によると、トーンは明度と彩度を複合した色の調子のことで、色相が違っても「うすい」「にぶい」のように共通のイメージを持ちます。
枯れた花束は、赤も青も緑も混ざっているのに不思議と落ち着いて見えます。
これは束全体が同じように鮮やかさを失って、トーンが近づいているからだと私は見ています。
自分でゼロから配色を組むより、すでに調子のそろった束から色を借りるほうが、ずっと早く決まります。
花束の前に服を並べて、色を3つ拾います
手順は4つだけです
天気のいい日の昼間に、次の順番で試してみてください。
照明の下だと色が黄みに寄って見えるので、窓辺の明るさがあるうちがおすすめです。
- 白い紙の上に花束を置き、直射日光の当たらない窓辺で眺める
- いちばん面積の広い色、次に多い色、ほんの少しだけある色を1つずつ選ぶ
- その3色に近い服や小物をクローゼットから出して、花束の横に並べる
- 3歩ほど下がって、花束と服がひとつの色のかたまりに見えるかを確かめる
3歩下がるのは、撮影現場でスタイリングを確認するときの私の癖です。
近くで見ると一枚ずつの違いが気になりますが、離れると全体の調子が合っているかどうかだけが目に入ります。
面積の比率も、そのまま服に写します
花束を見ると花びらの色を主役にしたくなりますが、面積をいちばん占めているのは葉や茎であることが多いんです。
枯れた葉のカーキやセージグリーンは服に置きかえると着回しやすい色なので、コートやロングスカートのような大きな面に向いています。
花びらの色は2番目か3番目に回すと、大人の装いにまとまります。
束の中に1輪だけ残った濃いバラがあれば、その色はバッグやイヤリングの大きさがちょうどいいくらいです。
束の見え方と同じ比率で服を組むので、配色で大きく外すことがありません。
花束は服の上に置かないでください
タイトルと矛盾するようですが、クローゼットに花束をしまっておくわけではありません。
色を合わせる間だけ、服のそばに連れていきます。
枯れた花は触れると花びらのくずが落ちるので、白いニットの上にのせると繊維に入り込んでしまいます。
花粉の残った花はとくに、服に直接触れさせないようにしてください。
合わせ終わったら、湿気の少ない場所に戻しましょう。
花の色を、秋冬の服に置きかえます
花ごとの色と、服での使い方
よく出会う花材を、服の色に置きかえるとこのようになります。
品種や乾かし方で色はかなり変わるので、あくまで目安として見てください。
| 花材 | 乾いたあとの色の目安 | 服での置きかえ | 合わせやすい色 |
|---|---|---|---|
| 赤いバラ | 黒みのあるワイン色 | ボルドーのニット、小さなバッグ | チャコール、グレージュ |
| ピンクのバラ | くすんだモーヴ | ローズベージュのブラウス | カーキ、ブラウン |
| アジサイ | 褪せたブルーやグレー | くすみブルーのシャツ | ブラウン、エクリュ |
| ユーカリ | 銀みのあるグリーン | セージグリーンのスカート | エクリュ、ボルドー |
| ミモザ | 褪せた黄色 | マスタードのストール | ネイビー、グレー |
| ハスの実 | こげ茶 | ブラウンのブーツやコート | モーヴ、セージグリーン |
そのまま着られる3つの組み合わせ
手持ちの服に近いものがあれば、この3つから試すと始めやすいと思います。
- セージグリーンのロングスカートにエクリュのニットを合わせ、ボルドーの小さなバッグを持つ
- チャコールのコートの中をモーヴのタートルネックにして、足元はブラウンのブーツにする
- くすみブルーのシャツにブラウンのパンツを合わせ、マスタードのストールをひと巻きする
どれも3色までに収めています。
4色目を足したくなったら、白やグレーのような色みの少ないものにとどめると、束の静かな雰囲気が残ります。
今季の流行色とも重なります
日本流行色協会(JAFCA)の2026/27年秋冬レディスウェアカラーには、「ラッシュ・フォレスト」というグループがあります。
奥深い森で目が慣れたころに見えるような、暗く鈍いナチュラルカラーと説明されていて、グリーンからブルー、土や鉱物を思わせるブラウンで構成されています。
光の膜をかけたようなごく淡い色の「センソリー・レセプター」というグループも発表されています。
枯れた花束の沈んだ部分と褪せた部分に、それぞれ重なる印象です。
買い足すときも、花束から拾った色なら今季の売り場で見つけやすいと思います。
くすみ色で顔色が沈むときの直し方
顔の横で一度だけ確かめます
くすみ色について、お客様から「着ると疲れて見える」という相談をよくいただきます。
束の色が美しくても、同じ色がどなたの顔にも合うわけではありません。
日本パーソナルカラー協会の説明では、パーソナルカラーは肌や瞳、唇などの色に調和する色で、肌の色に似た色とは限らないとされています。
色相だけでなく、明度・彩度・清濁も含めて顔への影響を見るそうです。
濁りを含む色が得意な方もいれば、澄んだ色のほうが映える方もいる、ということですね。
ご自身の傾向を知りたい方は、以前書いたパーソナルカラーで見つける、あなたに似合う花の色も読んでみてください。
その場で試すなら、いつものメイクのまま、明るい窓辺の鏡の前で服をあごの下に当てます。
目の下の影や口元のしわが濃く見えたら、その色は顔まわりから外すサインです。
顔から離せば、使える色は増えます
顔の横で沈んだ色も、あきらめる必要はありません。
スカートやパンツ、靴に移すと、顔色への影響はぐっと減ります。
どうしてもトップスで着たいときは、襟元に白やエクリュのインナーをのぞかせてください。
顔のすぐ下に明るい色がひと筋入るだけで、ずいぶん印象が変わります。
ツヤのあるものを一か所足します
くすみ色をマットな素材だけでそろえると、枯れた花の乾いた質感まで写してしまい、全体が粉っぽく見えることがあります。
そんなときは、光を返すものを一か所だけ足します。
- パールやゴールドのイヤリング
- サテンのブラウスやスカート
- 表面の整った表革のバッグや靴
撮影の現場でも、くすみ色の衣装が重たく見えたときは、まず耳元に小さな光を足すところから調整しています。
全身を着替えるより先に、イヤリングひとつで試してみてください。
花束を手放す前に、色だけ残しておきます
捨てる前にスマホで1枚撮ります
ドライフラワーに捨てどきの決まりはありませんが、岡本さんは6か月ほどを目安に入れ替えることをすすめています。
ほこりが気になりだしたら、そろそろお別れの時期です。
手放す前に、白い紙の上に置いて昼間の光で1枚撮っておきましょう。
買い物のときにその写真を開けば、売り場で迷ったときの基準になります。
スマホの画面では実物と色が少しずれることもあるので、最後は店頭で実物を手に取って決めてくださいね。
花屋で、枯れたあとの色から選びます
手元に束がない方は、乾かす前提で花を買うのも楽しいものです。
岡本さんによると、バラやアジサイのように茎が固く水分の少ない花が向いていて、チューリップやユリは不向きです。
咲ききる前のものを選び、直射日光と湿気を避けて吊るせば、2〜3週間ほどで仕上がるとのことです。
10月の終わりに吊るしておけば、コートを選ぶ頃には自分だけの見本ができあがっています。
絵から色を学びたい方には、ボタニカルアートから学ぶ、繊細な色使いのコツも合わせてどうぞ。
まとめ
枯れた花束は、秋冬のくすみ配色をそのまま見せてくれる見本です。
もう一度、要点を振り返ります。
- 花束の中で面積の順に3色を拾い、同じ比率で服に写す
- 花束は服に直接触れさせず、色を合わせる間だけそばに置く
- 色の濁りが顔に合わないときは、ボトムスや靴に移す
- 重たく見えたら、イヤリングなどで光を一か所足す
- 手放す前に写真を撮って、次の買い物の基準にする
私はいまでも、花屋の店先で枯れかけの枝を見ると、次はどの服に写そうかと考えてしまいます。
窓辺の花束を捨てる前に、一度だけクローゼットの前まで連れていってみてください。
今年の秋冬に着たい色が、きっとそこに残っています。
出典
本記事の執筆にあたり、以下の情報を参考にいたしました。
- 日光を避けて吊るすだけ!花のプロが教えるドライフラワーの作り方・簡単インテリア術 – るるぶ&more.
- episode1:PCCS(日本色研配色体系)とは – 一般財団法人日本色彩研究所
- パーソナルカラーとは – NPO法人日本パーソナルカラー協会
- 2026/27年秋冬JAFCAレディスウェアカラー – 一般社団法人日本流行色協会